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周回遅れの読書 ヘミングウェイ全短編2 [书]


勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪―ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫)

勝者に報酬はない・キリマンジャロの雪―ヘミングウェイ全短編〈2〉 (新潮文庫)

  • 作者: アーネスト ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/06/28
  • メディア: 文庫



ヘミングウェイの短編を読んでいますが、なるほどヘミングウェイがノーベル文学賞を取ったという理由がわかるような気がします。ヘミングウェイは自身の趣味の釣り、狩り、闘牛、競馬、ボクシングなど書いていますが、すべてにわたって悲しみが描いてあります。

人間の性(さが)の悲しさです。明るい作品は皆無と言っていい。独りで森でキャンプを楽しみ、川で鱒釣りを楽しむ描写があって一見すると明るそうなんですが、孤独を楽しむ寂しさがあります。八百長に失敗する競馬騎手の話し、闘牛士に憧れて遊び半分の闘牛ゴッコで死ぬ少年の話し。

禁酒時代の米国の田舎州で密造ワインを売る老い先短い老夫婦が、親しくなった客夫婦と最後の飲み会をしようとして出来なかった話し、すべてが悲しい話です。ペーソスそのものです。ディズニーとスーパーマンの米国に何故にかくも哀愁の作家が生まれたのか、不思議ですが。

フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー(映画では「華麗なるギャツビー」)」にはちっとも感動しなかったのですが、ヘミングウェイは人間の性の悲しさを描いています。フィッツジェラルドは、男女の機微、情念を巧みに描いていますが、時代や背景の視点が余りない。ちなみに、去年のボブ・ディランの受賞にはとても違和感を抱きましたが。なぜディランはノーベル賞を受けるのか?と。

ところで、私はロードバイク自転車レースのファンですが、いつもドーピング事件が起きています。八百長なんですが、困ったもんだと。しかし、ヘミングウェイの短篇を読んでいると八百長は人間の性?なのか?と思ったりします。文学になるんですからね。

そして、闘牛があれほど人気なのは、牛には八百長が効かないという理由もあるのか?と思ったりしました。八百長どころか、生死にかかわる真剣勝負ですから。だからスペインでは凄い人気なんでしょう。ヘミングウェイが描く闘牛士は人間味溢れていてかつ悲しい生き様です。




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周回遅れの読書 ヘミングウェイ全短編1 続き [书]





この短編1は、「われらの時代」と「男だけの世界」とに分けられていて、前者がヘミングウェイの幼少期から青年期までをモチーフとしているようで、後者がそれ以降のようです。好みで言えば、前者が瑞々しく素敵な感じですが、後者は短篇としてはより起承転結がはっきりした作品もあるのですが、好みではないです。

それでも、「敗れざる者」とか「五万ドル」などはストーリーに惹き付けられる勢いがあります。前者はピークを過ぎた闘牛士が再帰を図りまた失敗に終わる話。後者は八百長ボクサーが胴元が組んだ八百長をさらに八百長で切り抜ける話。短篇としてはよく出来ています。

短篇集前編の「われらの時代」にも八百長競馬の騎手話の「ぼくの父」が出てきます。私が好きな今の自転車レース界でもドーピング八百長が絶えませんが、八百長はヨーロッパのプロスポーツに付きもので、これが小説の題材となるほど奥が深い?と複雑な気持ちになりますが。

後編の「男だけの世界」は、短篇としてのストーリー性は優れていますが、どうもヘミングウェイらしさが欠けて、短編作家としての売れ筋商品を執筆したのか?という感じがします。それでも「敗れざる者」は年老いてピークを過ぎたのに過去の名声にしがみつこうとする悲哀をよく描写しています。

文学性という点では前編の「われらの時代」が良いと思います。いずれにしても文章力があるので(当たり前ですが)、しっくりと読める短篇集で読んだ後にスッキリとした読後感が残ります。






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周回遅れの読書 ヘミングウェイ全短編1 [书]


われらの時代・男だけの世界 (新潮文庫―ヘミングウェイ全短編)

われらの時代・男だけの世界 (新潮文庫―ヘミングウェイ全短編)

  • 作者: アーネスト ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1995/10/01
  • メディア: 文庫



先日、ヘミングウェイの「老人と海」を読んだのがまずかった。やっぱり和書よりも洋ものの方が面白い。ロマンがあります。このヘミングウェイも前に買って読もうと思っていたもの。短篇は苦手ですが、これは全編繋がっている。「われらの時代」は序文から始まり、跋文で終わる短篇集。

短篇の前に挿話があって、前半は第一次大戦中の話し、後半はヘミングウェイが好んだ闘牛士の挿話。短篇の流れはヘミングウェイの子供の頃から青年となるまでの時代の流れを描くもの。文章力があるというか、描写が良い。

最後の森でのキャンプや鱒釣りの描写は素晴らしかった。目の前に情景が浮かび上がるような感じです。「老人と海」でもそうですが、自然の描写が秀逸です。短編集ではフィッツジェラルドなんかが人気のようですが、どうもフィッツジェラルドは私の好みではないです。フィッツジェラルドは都会派です。ヘミングウェイは自然派。

まあ、ヘミングウェイが好きだというのはオヤジなんでしょう。



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周回遅れの読書 老人と海 [书]


老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

  • 作者: ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 文庫



言わずと知れたヘミングウェイの名作。小さい時に絵本のような童話版で読みました。そして、アンソニー・クインの映画を見て読んだ気になっていたようですが、ちゃんと読んでない。数年前に文庫本を買って手元にありました。勿論、翻訳本ですが、傑作です。

漁の運に見放された老人が、一人で巨大なカジキマグロを釣り上げる話し。孤独な海上で老人の独白のような心理描写が続くのですが、実に素晴らしいノベルです。この運に見放された老人を漁の師匠と慕う少年が出てきますが、その様子が少年らしくて泣かせます(特に私のような爺には 笑)。

大昔のことですが、桑原武夫か誰かが、青春時代に読むべき小説として、日本の小説は私小説がメインで物語として面白くないから読むべきは、西洋のものにしろとアドバイスしていました。そのアドバイスに沿って、日本の作品は夏目漱石くらいで読む小説は洋ものばかりでしたが、やっぱり面白かった。

で、このノベルを読んでみると、今でもヘミングウェイは面白い。日本の小説は四畳半が黴びたような淫靡で矮小なものがまだまだ多いとは言いすぎか?翻訳は福田恆存でさすがです。この福田恆存は保守の論客だったようですが、思想信条は自由ですしね、どうでもいいんですが。







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周回遅れの読書 爪と目 [书]





これは只のホラーなんでしょうな。読む必要が無かったなあと。芥川賞をわざわざ与える事も無いでしょう。日本ホラー大賞でもいいのにねと思いました。そんなのあるのか知りませんが。子供を美化することはないけど、子供をネタにホラーか?三文テレビドラマのネタ脚本ならいいでしょうけど。

ホラーに興味ないので読むに値しなかったなあと。芥川賞ってただの娯楽ホラー小説でも受賞するんですね。小説の冒頭で主人公は一体誰?というところは興味が持てました。同書にある他の短篇も文章力はあるのですが、もう少し煮詰めるといい短編になるのに。何を描きたいのか曖昧だから勿体ない。兎も角、新幹線の車中、飛行機の搭乗中などで時間潰しに読むのには良いと思います。




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周回遅れの読書 砂の女 [书]


砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

  • 作者: 安部 公房
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 文庫



この小説は昔読んだ気がしますが、単にテレビドラマを見て読んだと思っただけかもしれません。読み返しても何ともよくわかりませんが、色々な解釈が可能な万華鏡のような小説です。テレビドラマでは、岸田今日子が女を演じたのですが、個人的には田中裕子だったら良かったと思う。どうでもいいのですが。

そして、この小説は昔NHKでやっていた英国連続ドラマの「プリズナーNo.6」を連想させるのです。こちらは、諜報活動員が氏名を剥脱されて幽閉される話し。何度も脱出を試みるがその度に失敗する。最終回は脱出成功するんですが。「砂の女」でも最後は脱出に成功するようですが、失踪者として終わる。

小説は様々な解釈が可能ですが、「愛郷精神」というのが出てきます。「砂の女」の女は自らすすんで砂の穴に閉じ込められた生活をしているのですが、それは一面、「愛郷精神」からと言う。懸命に毎日砂かきをしないと砂に埋もれて地域が埋もれる。だから地域の「愛郷精神」で懸命に砂かきする毎日。

たまたまそこに閉じ込められた主人公は、そんなバカバカしい砂の地域を出て外でもっと楽しく生きようと女を鼓舞する。が、頑として女は受け入れない。外に出たって大変でしょう!と。こりゃ現在の現代社会への皮肉にもとれる。現代社会とはシステム上、愛国心(愛社心)で砂かきする毎日とは言えなくもない。小説の最後では事実上解放された男はそのまま失踪者となるようですが、彼は一体、何から脱出したのか?混沌となる。

単調極まりない砂かきという仕事も、日々の生活リズムになると生き甲斐ともなる。しかも、その品質の悪い砂をセメント会社に砂の地域では売りつけている。それじゃ買ったセメント会社が困るでしょうと男は諭すのですが、女はそんな外のことなんかどうでもいいじゃないですか!と。ああ、現実に今でも欠陥品を売り出す大手メーカーも多いですしね。

安部公房はもうちょっと長生きしていればノーベル文学賞は取れたかも知れないですね、ホント。今年も村上春樹がノーベル文学賞を逃したので安部公房を読んだのです。ところで、安部公房は旧満州育ちです。そのせいか、廣野や砂丘でも荒涼とした風景描写がその小説の原点なのかなあと思ったりします。安部公房の小説を読むと最近のノベルは軽い読み物風で読みやすい。安部公房の小説は、毎度の事ながら読むのに凄い抵抗を示しますなあ。

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周回遅れの読書 「ウミガメの夜」他 [书]





「九年前の祈り」を読んで、続く「ウミガメの夜」、「お見舞い」、「悪の花」の短篇三篇は後で読もうと思ったのですが、そのまま読んでみると「九年前の祈り」の続編でした。これで「九年前の祈り」としての完成なのか?と。

「ウミガメの夜」を読みはじめると、舞台は同じ大分県佐伯市で、あれこれは繋がるのか?と思ったら繋がった話しだった。「九年前の祈り」の部分だけ読んだ直後の印象と全体を通して読むのとはちょっと違う感じがしました。

「九年前の祈り」だけの方が簡潔で良かったような気もします。「ウミガメの夜」では仰向けにされた産卵直後の亀が、「お見舞い」では無事に海に帰されて終わったようで、亀好きの私はホッとした(笑)。

「九年前の祈り」でも精神障害児が軸でしたが、続編の「ウミガメの夜」、「お見舞い」、「悪の花」でもタイコーと呼ばれる重度ではない精神障害児(中年になるんですが)が軸となっている。このタイコーは「九年前の祈り」でも主人公の母のお友達(年配)の息子として描かれている。

三短編全体としてはこのタイコーが軸となるストーリー。最後の「悪の花」ではタイコーがメインテーマとなる。軸とは言っても直接には登場はしてこない。ネットで調べると、著者はこの「悪の花」を最初に書き、あとは見舞い、カメ、九年前と単行本とは真逆の順に書いたとか。なるほどねえと。単独であればこの「悪の花」が一番判りにくいのですが、単行本の順に読むとすんなりと判りやすい。本当に書きたかったのはこの「悪の花」だったのでしょう。

九年前の重度精神障害児の男の子とこのタイコーがとてもメンコい感じがしました。宮城弁で言えば「もぞこい」に近い。もぞこいとは哀れという意味でも言われますが、可愛いという意味もありますし、愛おしいという意味も含まれる。微妙なニュアンスですが。
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周回遅れの読書 九年前の祈り [书]


九年前の祈り

九年前の祈り

  • 作者: 小野 正嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/12/16
  • メディア: 単行本



これも芥川賞受賞作品ですが、この作家の手法でしょうが、過去の回想が文中に突然入るので、そういう書きぶりと思わないで読むと混乱します。が、読んでいるうちにわかる。一昔前の映画で流行った手法なんでしょうな。それによって主人公の心理を描写する。ちょっと古いよね、この方法と思いながら読みました。古いフランスのヌーベルバーグ映画を連想したのですが、調べると著者はフランス文学が専門らしい、ああなるほどと。

物語は母子の話。息子は重度?の精神障害を持っている。私も日常、そういう患者さんを診ることがあるし、知り合いが小中学校で精神障害児を担当しているので切実なテーマに感じました。誤解されそうですが、ケアする側に「救いようが無い」という現実を受け入れることが「救い」であるという逆説的な現実がある。

小説の母も息子に過剰な期待をする葛藤が描かれている。でも現実は違う。ケアする側にpityという感覚がある限りconflictは続くのでしょう。そうではなくありのままを受け入れる、そしてケアではなくて、対等にcontactできるようになれば良いのでしょうが、そういう境地にはなかなか至らない。特に親子関係は。


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周回遅れの読書 穴 [书]


穴 (新潮文庫)

穴 (新潮文庫)

  • 作者: 小山田 浩子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/07/28
  • メディア: 文庫



これも芥川賞受賞作品ですが、なかなか不思議な小説です。タモリの世にも奇妙な物語風ですが、ちょっとその比喩はなんだかなと言うなら、安部公房風と言っても良い展開ストーリー。最初の書き口は普通の小説なんですが、筆力があり途中から気味が悪くなる。

不気味な感じがしてくるのですね。そんな具体的な描写はないのですが。でやっぱり奇妙な展開になっていく。不思議の国のアリスと小説にも出て来るのですが、獣を追って穴に落ちるともうヘンテコな世界観が拡がる。

主人公は夫の転勤について田舎に引っ越すのですが、実に奇妙な世界が拡がって、そこに馴染んで居つくというストーリー。文章にも演出をしていて、わざと文に改行がなくズラズラと会話文も続けて書いてある。読者は何処で区切れがあるのかわからない不安定感を味わう羽目となる。

この本に載っている短篇の「いたちなく」と「ゆきの宿」はオーソドックスな文章です。「穴」もこの短篇二篇も主題は田舎の都会人の知り得なかった環境、、、環境というか不条理というか不合理というか、都会人や現代人が合理的に切り捨てて来た部分なんでしょう。

「穴」ではその部分は未解決のままで終わり、都会から来た主人公はそれをそのまま受け入れというか、そこに埋没する。「穴」には葬式という死があり、短篇二篇(これはこの二篇で一つの話し)には誕生という生がある。そして主人公たちは都会というか現代に戻る。

上手く書かれています。欲を言えば「穴」はもっと深く書いても良かった。でも、そうすると読みにくくなる。「いたちなく」は「つつがなく」をもじっている。つつがとはツツガムシのこと。いたちごっこの言葉の由来が出て来る。でもこのいたちごっこはもともと子供の遊びで、著者の創作だろうか?どうでもいいですが。










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周回遅れの読書 スクラップ・アンド・ビルド [书]





面白かった本ですが、私は療養病床のドクターしていますので、なるほどねえと思えることが多かった。著者は「薬漬け病院」に行く度に祖父が弱体化するとか、介護施設は利益のために延命化しているとか、まあ紋切り型の書き方していますが、この方が一般の読者が飲み込みやすいのでしょう。

こういう些細な書きぶりには若造のドクターのように一々は反論する気はないです。爺ドクターなんで。ともかく高齢者のことがよく書けています。どんな高齢者であっても生きたいし、異性にも興味がある。そしていつも家族のことを考え、寂しさを感じている。家族には甘えいたし、嘘をついても自分が若い頃のことを美化したい。

こういう単純なこと(普通の若い世代と高齢者とはそれほど違いがない)が一般の人や家族にはなかなか理解できない。そのある種の家族間の葛藤がよく描かれていてなるほどねえと思いました。若い世代の高齢者への期待感と、その期待外れの現実とのギャップがこの小説を産み出したのでしょう。



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